「食品工場のオペレーターってどんな仕事?」
この記事では食品工場で18年間、機械オペレーターとして働く私が、「仕事内容」「1日の作業の流れ」「オペレーター職の役割、向き不向き」などを詳しく解説します。
細かい業務内容などは各工場によって異なりますが、基本的な作業内容は共通しています。
ぜひ就職、転職の参考にしてください。
食品工場(大手関連会社)オペレーター歴18年。
現在も課長職として働く高卒・工場ワーカー。
過去に記者、IT関連営業など10を超える職種を経験。
現在は副業でブログ運営、Webライターとして活動しながら、定年後の”独立”をめざしています。
食品工場オペレーターとは?
食品工場のオペレーターとは「食品を製造する機械装置を操作する職種」です。
操作だけでなく
- 機械装置が正常に運転しているかの監視
- 不具合が発生した場合の調整
- 部品交換
- 注油などのメンテナンス
これらがおもな業務内容となります。
難しい調整や機械トラブルは「保守」を担当する部署に対応を依頼します。
機械が正常に動かないと製造ラインを止めることになるので、つねに集中してラインを監視。
異常により早く気づき、原因を探る必要があります。
どんな機械を扱う?
食品工場で扱う機械には次のようなものがあります。
- 調理機器
- 充填機器
- 包装機器
もう少し詳しく解説しましょう。
調理機器
ひとくちに調理機械といっても、その工場で生産している食品によって、機械の種類は多岐にわたります。
まず、調理の工程には主として「煮る」「焼く」「蒸す」があります。
家庭用の調理器具であれば「鍋」「フライパン」「蒸し器」などに該当しますが、食品工場ではそれらを大型にした「業務用機器」を使用。
私の勤める工場では「煮る」工程がメインのため、大型の「釜」を使用しています。
各原料を投入した釜に”蒸気”で加熱して煮上げます。
また、原料の”加工”から行う工場では「切る」ための機械もありますし、原料を混ぜる「かくはん機」を使用する場合もあるでしょう。
充填(じゅうてん)機器
でき上った製品を容器に詰める際に使うのが「充填機器」です。
食品には「固形物」「液体」「粉末」などがありますが、それらを「袋」や「ボトル容器」「ガラス瓶」などに詰めていきます。
飲料水などをボトルに充填する、高速で回転する機械を映像で見たことがある人もいるでしょう。
包装機器
個別に袋詰めなどがされた製品は「シールラベル」や「シュリンクラベル」などによって「製品表示」「賞味期限表示」がされます。
そして最終検査を経て段ボール箱などの輸送に適した形に包装され、出荷となります。
この工程で使用される機械には「シール機」や段ボールに詰めるための「ケーサー」、賞味期限などを打つ「インクジェットプリンター(IJP)」、「エックス線検査機」「金属探知機」、そして段ボール箱をパレットに積みつける「パレタイズロボット」などがあります。
食品工場オペレーターは無資格、未経験でもできる?
機械を操作する仕事と聞くと「なにか資格が必要では?」そう考えるかもしれません。
しかし、ほとんどの機械の操作については、特別な資格は必要ありません。
オペレーターとしての経験があるに越したことはありませんが、未経験でも用意されたマニュアルや先輩から学ぶことで働くことができます。
大切なのは、機械の仕組みをよく理解しようとする心がまえです。
ただし、資格とはいかないまでも、外部の「講習」を受けるべき機械もあります。
「X線検査装置」や「パレタイズロボット」といった「特に危険を伴う機械装置」を扱う場合です。
X線は「被ばく」の恐れがありますし、積み付けロボットは稼働中に接触すると大ケガにつながります。
基本的には会社の費用負担で受講できるので、自身を守るためにも積極的に参加しましょう。
食品工場オペレーターの1日
それでは、実際のオペレーター業務の1日の流れを紹介します。
私自身は「日勤のみ」の食品工場で、「包装」工程で作業に従事しています。
定時は8時ですが「早出残業」で7時に業務開始。
すべての機械の電源を入れ、ラベル、シュリンクシール、段ボールなどの包材を機械にセットします。
さらに以下のチェックを行います。
- 賞味期限表示に間違いがないか
- 賞味期限印字のNG品はしっかり排除されるか
- IJPの印字に欠け、かすれはないか
- ラベル、シュリンクシール機の動作確認
- 使用するラベル・シール、段ボールに間違いはないか
- X線検査装置がNG品をしっかり排除するか
- 段ボールケーサーの動作確認、ホットメルトボンドの吐出確認
- 重量計に誤差はないか
同日に複数のアイテムを生産する場合は、以降の包材の準備、確認も行います。
やるべきことが多いので、朝の時間はあっという間に過ぎてしまいます。
8時前後に充填が開始されます。
機械に不具合がないか、生産スタート時は特に緊張する一瞬。集中してラインを監視する必要があります。
不良品発生などにより機械を止めることは、そのライン全体を止めることになるため、責任感が求められます。
とはいえ、時には予測が難しいトラブルも発生します。そんな場合は責任を感じ過ぎるのではなく、復旧に集中しましょう。
あまり開き直るのも問題ですが、オペレーターには適度な「メンタルの強さ」も必要なのです。
休憩は約10分間。時間は生産の状況によって前後します。
この間にお手洗い、水分補給などを済ませます。
生産アイテムの切り替えがある場合は、そこで休憩。
生産が途切れない場合は、交替で休憩をします。
1時間。昼休みも生産状況によって時間が変わってきます。
自分のクルマで過ごす人も多いのですが、私は食堂でイヤホンで音楽を聴きながら仮眠を取ります。
午後の生産スタート。
改めて賞味期限、包材、X線検査装置の点検などを行います。
14時ぐらいから”睡魔”が襲ってくることも多々ありますが、できる限りラインに集中します。
トラブルが無いに越したことはありません。しかし、そのぶん時間が経つのが遅く感じられるのは”工場勤務あるある”でしょう。
あと一息です。終わりが見えてきました。
とはいえ、生産の進み具合によっては「残業」が確定していることも・・。
生産が終了したらすぐに退勤!というわけにはいきません。
日報の確認、清掃、機械のメンテナンス、翌日の準備など、やるべきことがあります。
特に翌日の準備は、朝からバタバタしないためにも大切。
私はあまり残業をしたくないので、生産中にできることは済ませるよう心掛けています。
食品工場オペレーターの給料は?
食品工場オペレーターの仕事内容は、何となくお分かりいただけたでしょうか。
どんな仕事か理解できたら、やはり気になるのは「給料」ですよね。
工場勤務といえば「収入が低い」というイメージを持つ方もいると思います。
しかし、会社にもよりますが、私自身はそこまで給料が安いとは考えていません。
↓こちらの記事では、私の「源泉徴収票」「給料明細」を公開しています。
年収、1か月の手取りなどを知りたい方はぜひご覧ください。
食品工場オペレーターの「役割」
食品は消費者の「健康」に直結するだけでなく、時には「命」さえも奪いかねません。
また、重大なミスは「製品回収」などにもつながり、会社に大きな損害を与えます。
こんなことを言うと「そんな大変な仕事できないよ」そう感じるかもしれません。
でも安心してください。
食品工場は、そうした重大事故を防ぐためのさまざまなルール、工夫がなされています。
こうしたルールや工夫は、従業員個人に責任を押し付けるのではなく、工場全体としてミスが起こらない「システム」として構築されたものです。
決められたルールや作業手順をしっかりと守っていれば、重大な事故につながる可能性は低く、起きても最小限の損害で済むでしょう。
食品オペレーター3つの「役割」
機械オペレーターの役割は機械装置を安定的に稼働させ、不適合品を出さないことです。
こと「食品工場オペレーター」に関しては、以下の3点がもっとも重要となります。
- 異物混入の防止
- 密封性
- 賞味(消費)期限表示(=以下、賞味期限表示)
①異物混入の防止
食品の事故としてたびたび大きく報道されるのが「異物の混入」です。
健康被害が発生した、しないに関係なく企業のイメージを大きく落とし、回収などコスト面においても甚大な損失を生み出します。
また、近年は重度のアレルギー反応である「アナフィラキシーショック」を防止するため、「アレルゲン」(アレルギー物質)が製品に含まれる可能性や、含まれていることを明確に表示するよう求められています。
食品メーカーは生産現場への入室手順(手洗い、クリーンルームなど)の徹底に加えて、X線検査装置、金属探知機などで異物混入製品を発見する態勢を整えています。
また、万が一の事態に備え、「原因特定」「被害の拡大防止」のための「トレーサビリティ(追跡可能性)」を重視しています。
こうした異物混入の対策は従業員の意識はもちろん、オペレーターによる機械装置の「適正な運用」があって初めて有効となるのです。
②密封性
スーパーなどで販売されている食品の多くは「腐敗」「細菌の増殖」を防ぐため、加熱殺菌された状態で容器に充填されています。
私たちがこうした食品を安心して食べられるのは、容器の「密封性・気密性」が保たれているから。
もしも容器の封や蓋がしっかりされていなければ、食品は外気に触れて腐敗していきます。
そして、それが消費者の口に入れば、深刻な健康被害を生むことになるでしょう。
不十分な密封による「健康被害」を防ぐのは、やはり「充填装置の適正な運転管理」「メンテナンス」です。
とはいえ、機械装置が「絶対に不具合を起こさない」という保証はありません。
つねに製造ラインに目を光らせ、異常にいち早く気づき、不良品の発生を最小限に抑えることが求められます。
賞味期限表示
先ほど述べた「アレルゲン表示」と並び、食品メーカーには「賞味期限の正確な表示」も法律で義務づけられています(塩、砂糖など一部をのぞく)。
賞味期限の不正確な表示は、消費者に健康被害が及ぶ可能性が高くなるため「回収」の対象となります。
賞味期限はおもに「IJP(インクジェットプリンター)」や「ホットプリンター」で印字され、カメラによって印字状態がチェックされます(印字なし、文字欠けなど)。
通常、印字機械やカメラのメンテナンス、調整が適正であれば、不適合品が流出することはありません。
しかし、何らかのトラブル(停電など)によって機械が停止した場合は、印字不良の発生のリスクが高まります。
こういった場合はあわてず冷静に、ルールにしたがって確認、検品を行いましょう。
食品工場オペレーターに向いているのはどんな人?
食品工場のオペレーターは、未経験者にもハードルの低い職種です。
しかし私が18年間働いてきたなかで、やはりオペレーターの「向き不向き」を感じることはあります。
特に向いている人の性格は
- 集中して作業できる
- 問題解決が好き、苦にならない
オペレーターは生産ラインを監視して、小さな異変にも早く気づき対応しなくてはなりません。
たった1分の間にもたくさんの製品が流れていきます。
数分間、集中力を欠いたために、多くの不良品が流れてしまった、そんなことになりかねません。
もちろん、人が集中力を維持できる時間には限度があります。
「適度に息を抜きながら、なおかつ生産中はしっかり集中できる」
そんな人はオペレーターに向いています。
また、作業に集中していても、予期せぬトラブルは起こります。
トラブルが発生した時に、冷静に原因を探し出してどうすべきかを考える。
この「考える」ことが得意であったり、苦痛に感じない人のほうが、仕事に対して前向きになれます。
考えて、悩んで、原因と解決策にたどり着いたときの”達成感”は、オペレーター職のささやかな喜びです。
オペレーターに向かない人
一方で、特に「不向きかな」と感じられる人もいます。
- おしゃべり大好き
- 1か所にじっとしているのが嫌い
オペレーターには”集中力”が必要ですが、「おしゃべりに集中する」のはいただけません。
生産ラインから目を離さず手短な会話ならばよいのですが、相手と向き合って話し込んでしまう人がいます。
会話の内容も業務に関する事ならまだしも、趣味などの雑談はほどほどに。
「おしゃべりできないのは苦痛・・」そんな人にとっては、オペレーターは適職ではないかも知れません。
オペレーター職は「1か所に立って行うのか」それとも「歩き回るのか」。
それは管理する機械装置の数、範囲によって異なります。
しかし、基本は限られたエリアでのライン監視であり、「体を動かしっぱなし」というわけではありません。
そのような環境で働くことを苦痛に感じる人もいるかもしれません。
「食品工場オペレーター」身につくスキルは?
「食品工場のオペレーターはスキルが身につきますか?」
そう問われたら、私は次のように答えます。
- 「工場、製造業の転職」に役立つスキルは身につく
- 「異業種への転職」に役立つスキルは身につかない
①「工場、製造業の転職」に役立つスキルは身につく
ひとくちに食品工場といっても、扱う機械装置は会社によって異なります。
しかし、どんな機械であっても、基本的な仕組みは同じ。
現在の工場で扱う機械の仕組み、メンテナンス法などをマスターしていれば、他の工場でも即戦力として働けるでしょう。
ちなみに私が今の工場で身につけたスキル(資格)は次のとおりです。
- フォークリフト免許
- IS9001内部監査員
- HACCP講習
- X線作業主任者講習
- 産業用ロボット特別教育
いずれも費用は会社負担で、業務時間内に受けることができました。
こういったスキルに加えて、実務で得た知識や経験があれば、より良い工場への転職も有利に進めることができるでしょう。
②「異業種への転職」に役立つスキルは身につかない
残念ながら、これが現実です。
食品工場のオペレーター職も、会社選びさえ間違わなければ、それなりの収入を得ることができます。
工場勤務が性格に合っていて苦痛ではない、そんな人は製造業で通用するスキルを高めていけばよいでしょう。
しかし「工場だけで役立つスキルでは将来的に不安・・」
そういう人には、工場勤務をしながら「副業」でスキルを身につけることをおすすめします。
まずは「趣味」のレベルでかまいません。
少しずつ学んで、わずかでもお金を稼げるようになれば、自信がついて将来の不安も解消されるでしょう。
↓こちらの記事で「工場勤務者におすすめの副業」をまとめていますので、興味があったら読んでみてください。
食品工場はブラック?
食品工場=ブラック
いまだにこういったイメージを抱いている方は多いようです。
しかし「コンプライアンス」が叫ばれる世の中になり、法律やモラルに反した食品工場は減少しています。
とはいえ、ブラックな工場が存在するのも事実。
大切なのは働く私たちがしっかりと会社を見極め、自ら働く場を選択することです。
ブラック工場の特徴については、下記の記事で解説しています。
食品工場オペレーターの安定性・将来性は?
最後に「食品工場オペレーターの将来性」についてお話します。
まず「食」がなくなることはありません。食を作り出す「食品工場」も同様です。
今後、食品工場も「自動化」「AI導入」が進み、人員削減を含めた「合理化」が推進されるでしょう。
そうなった場合も、機械装置を扱うのは人間です。
オペレーター職自体がなくなることはないといえます。
ただし、自動化や合理化に対応できない中小の工場は淘汰されるか、大手メーカーに吸収されていくと予想されます。
製造業は慢性的な労働力不足に悩まされています。
それと同時に中小の工場は遅かれ早かれ「後継者問題」に直面し、廃業か吸収されるかを選択する時がやってくるでしょう。
私たちにできるのは、自身のスキルを高めつつ、会社の方向性を注視することです。
「失敗しない工場の選び方」については、こちらの記事↓で解説しています。
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